有機化学1(2015)のページです。予習復習に役立ててください
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有機化学1
前回の勉強でベンゼンに対するニトロ化やハロゲン化などの求電子置換反応について勉強しました。それではトルエンやニトロベンゼンに対する置換反応はどうなるのでしょうか。今回の学習は置換されたベンゼンに対する求電子置換反応です。
置換基はそれぞれに電子的特性と立体的特性を持ちます。求電子置換反応に寄与するのは電子的特性です。トルエンの置換反応の場合、o,m,pの置換される場所がありますが、求電子置換反応はトルエンのメチル基に対してo位とp位のみに選択的に進行して、m位に置換されたものはできません。一方、ニトロベンゼンをニトロ化すると、それとは逆にm位に置換されたものばかりできます。これはどうしてでしょうか。
中間体の安定化を考えるとよくわかります。一般に置換基のo位とp位は置換基の影響を受けやすい場所です。置換反応の中間に生じるペンタジエニルカチオンの共鳴安定か構造を書けば、o位とp位に置換された場合、置換基のすぐとなりに+電荷がくる共鳴構造式がかけます。もし置換基が電子供与性、すなわち電子を出してカチオンを安定化する置換基の場合、中間体カルベニウムイオンを安定化してその生成のしやすさを助けます。従ってo位とp位の置換は有利になり、生成物が増え、o,p配向性となります。一方、電子求引基の場合は、o,p位が電子不足状態になるので、よりカチオンを不安定化し、その結果o,p位への反応は遅くなります。結果として影響を受けにくいm位への置換が優先してくるのでm配向性が観測されることになります。
官能基は3つのカテゴリーに分けられます。1つめは電子供与性基で、これはベンゼンよりも置換反応が速く、o,p配向性を示す官能基です。アミノ基、水酸基、アルコキシ基、アルキル基などがこのカテゴリーに入ります。2つめは電子求引性基で、電子を引っ張るもの、主にカルボニル基を持つものですが、それ以外にもシアノ機、ニトロ基、アンモニウム、トリフルオロメチル基などがあります。これらの置換気がつくと求電子置換反応速度は著しく遅くなります。またFriedel-Crafts反応は全く進行しなくなります。これは置換ベンゼンの合成方法を考える上で大事なポイントです。
3つめはハロゲン。これは誘起効果(電気陰性度に基づくσ結合の分極)では電子を引っ張りますから、電子求引基として作用しますが、ハロゲンのローンペアは共鳴効果的には電子供与基として作用します。結果としてハロベンゼンは求電子置換反応速度はベンゼンよりもやや遅くなりますが、配向性はo,p配向となります。
これらの官能基の電子求引性あるいは電子供与性の強弱は教科書にその図が載っていますので、この順序であることを理解しておきましょう。この図は官能基の性質を知る上ではとても便利な図であり、電子的効果の細かいチューニングに波欠かせない情報を与えます。この図は有機化学Ⅱ限らず、無機化学・物理化学・生化学まど他分野で使いますので、是非マスターしておくようにしてください。
ベンゼンの置換基の導入の戦略は、これまでに勉強した反応を組み合わせることで可能になります。官能基のo,p配向、m配向、それに反応のしやすさ、適用限界を見極めることで実現性の高い剛性計画の立案ができます。これは有機化学を勉強するためには絶好の勉強方法になりますので、教科書の問題などを解くことで実力を養成してください。
Thursday, 23 July 2015
Electrophilic aromatic substitution, part 2