有機化学1(2015)のページです。予習復習に役立ててください
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有機化学1
エポキシドは三員環エーテルですが、三員環のひずみのために他のエーテルにはない反応性を持っています。エーテルはなかなか切れにくい官能基であることが知られていますが、エポキシドは例外です。三員環のひずみエネルギーが置換反応によって解き放たれるので、その結果エーテルにはない高い反応性を示すのです。酸触媒と塩基触媒でのエポキシドの環開裂反応は、それぞれSN1反応とSN2反応の考え方を適用すれば理解できますが、微妙な違いを認識しながら、これまでに勉強した知識を総動員した有機化学の総合的な考え方を身につけるには、最もよい勉強のターゲットと言えます。教科書の300ページから301ページの内容は(わずか10ほどしか文はありませんが)完全に理解できるようにしておくとよいでしょう。
酸触媒反応では、プロトンは最初にエポキシド酸素の配位します(これはアルコールの所でもおなじみですね)。こうなるとエポキシド酸素はよい脱離基になりますので、エポキシドの2つの炭素−酸素結合の一つが切れてカルベニウムイオンを発生しやすくなります。このとき注意点が2つ有ります。1つめはどちらの結合が切れるのか、の問題です。これはカチオンを出しやすい、ということからカチオンがより安定化される側の結合が切れます。すなわち多置換側の炭素−酸素結合が選択的に切れることになります。2つめはカチオンについてです。このカチオンは、いわゆる普通のカルベニウムイオンにはなりません。酸素の「隣接基関与」が働くので、カチオンとしては安定化されますが、結果として普通のカチオンでなく、エポキシドの結合も切れ「かけている」という状態になります。すなわち、エポキシド酸素は完全に切れている訳でない!その結果カルベニウムイオンに特有の:「ラセミ化」の問題は、隣接基の酸素が「押さえている」ために起こらないことになります。求核剤はこの状態に対して、エポキシド酸素の反対側から、「SN2的攻撃」して置換が完了します。カチオンの安定化、がキーであるこの反応ではSN1ではあるものの、SN1特有のラセミ化の問題は起こらず、反応が終わってみれば「立体反転」なのです。従って授業では「SN1 like」あるいは「SN1的」と区別して定義しました。
次に塩基性条件ですが、この場合はエポキシドに対してダイレクトにSN2反応して置換が完了します。Grignard試薬も同様の反応の仕方をします。立体障害の少ない炭素、言い換えれば置換基の少ない炭素が選択的に反応します。すなわち置換反応をうける炭素は先の酸触媒で有利だった炭素とは逆の炭素−酸素結合が開裂することになります。一つのエポキシドから反応条件だけで、反応の制御ができるのはなかなかおもしろいですね。
アルコールの硫黄誘導体はチオールといいます。またエーテルの硫黄誘導体はスルフィドです。生体内では硫黄化合物はアミノ酸のシステインがありますので多くの働きをしています。主なものはシスチンのS-S結合、グルタチオンの求核付加、あるいは置換反応。それにアセチルコエンザイムCoAを経由したカルボニル基への付加脱離反応があります(CoAの場合はそれを使ったアルドール反応もあります)
アミンは窒素のローンペアの求核性が高いので、ハロアルカンと容易にSN2反応してアミンを生成します。このアルキル化反応はなかなか制御しにくく、第三級アミンや第四級アンモニウム塩を作ってしまいます。もう一つのアミンの反応は亜硝酸との反応によるジアゾニウム塩の生成です。ジアゾニウム塩は脱窒素できわめて容易にカルベニウムイオンを出す優れた脱離基ですが、これは有機化学Ⅱの範囲にあるサンドマイヤー反応のところでもう一度詳しく勉強することになります。
中間試験を6月18日(木曜日)と6月25日(木曜日)の2回に分けて行います。両方受けてください。受けななければ単位は出ません。1回目の18日は教科書の9章から11章、2回目の25日は教科書の12章から15章の授業で終了したところまで(該当する章末問題は含みます)、を範囲にします。中間試験で好成績をとっておくと単位についての心配は減るでしょうが、ここで適当にしておくと、相当苦しくなります。過去にも再受講を余儀なくされたケースのほとんどは中間試験の時の成績不振が原因です。しっかり復習して望むようにしてください。卒業がかかっている人は、特に気合いを入れて悔いのないように勉強に集中してください。
試験会場は、現役の2年生(編入学を含みます)はD11、3年生(再受講1回目)はD22、4年生以上はD33で行いますから、場所を間違わないように集合してください。試験は10時20分から開始の予定です。
Thursday, 4 June 2015
Reactions of alcohols, ethers, thiols, sulfides, and amines, part 2