有機化学1(2015)のページです。予習復習に役立ててください
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有機化学1
前回の勉強では不斉炭素が1つエナンチオマーの勉強しました。今日の内容は不斉炭素後2つ以上ある分子ではどうなるだろうか、がトピックスです。また、エナンチオマーの混合物はどうなるのか、についても学びます。今日のキーワードは、ジアステレオマー、メソ、ラセミ、です。
エナンチオマーはお互い重なり合わない、しかしお互いに鏡像体の関係にある異性体のことです。もし不斉炭素が2つ以上あると、ある不斉炭素では鏡像関係になるが、ほかでは一致してしまうというようなコンビネーションも起こります。教科書ではエリトロースとトレオースの2つがあげてありますが、エリトロースとトレオースの関係はエナンチオマーではなく、もちろん重なり合わせられないので別の異性体です。こういった立体化学の違いだけで異性体になるものをジアステレオマーといいます。不斉炭素が2つ以上あると、エナンチオマーに加えてジアステレオマーが生じます。ジアステレオマーは、異なる化合物として認識できる化合物なので、物性がほぼ一緒のエナンチオマーとは違い、分離もできます。エナンチオマー同士の1:1混合物をラセミ体といいますが、ラセミ体の分離によるエナンチオマーの分割はきわめて困難で(これを光学分割といいます)大変ですが、もう一つの不斉炭素を導入して、ジアステレオマーの関係にしてしまえば、異なる化合物として認識できるので、分割が可能になります。
不斉炭素の数nと異性体の数Nは、N = 2^nとなります。不斉炭素の数が1,2,3,4と増えていくと、異性体の数は、2,4,8,16と増えていくことになります。ところが、不斉炭素を持っているのにどういう訳かアキラルな化合物ができてしまうことがあります。これをメソ化合物といいます。メソ化合物が生じるときには、分子に対称要素があります。たとえば酒石酸では分子が対称なので、不斉炭素の立体化学によっては、分子全体に対称面が生じてしまい、不斉炭素があるにもかかわらず分子全体がアキラルになってしまい光学活性を失う結果になります。こういうものをメソ化合物もしくはメソ体と呼びます。結果として酒石酸ではRR, SS, およびメソの3種類の異性体があることになります。
光学活性な化合物は、アキラルな環境では物性は一緒といっても、生体のようなキラルな環境では、物性が異なります。従って、我々自身(=キラル環境)に投与すれば、エナンチオマー同士で作用の仕方が変わります。一方が効いて、もう一方が薬効なし、ならいいのですが、一方が害を及ぼしてくれては困ります。そのため医薬品は光学活性な化合物で供給されるべきであり、エナンチオマーの一方のみを選択的に作る不斉合成が重要になってきます。これは大変な努力が必要で、日々合成化学に携わっている研究者が賢明に良い方法を作り出しながら医薬の供給に奮闘しているのです。
Thursday, 7 May 2015
Stereochemistry and molecular chirality, part 2