Conformation and strain in molecules 1
Conformation and strain in molecules 1
今日の講義は分子模型を作ったらすぐにわかる単純な話です。でも、分子模型をくまないで横着をすると確実にわからなくなりますよ。復習では分子模型をくんで、それを眺めながらしっかり理解するようにしてください。
キーワードは立体配座(conformation)およびねじれ型コンホメーション(staggered)、かさなり型コンホメーション(eclipsed)です。また、その表記法のNewman投影にもなれましょう。
エタンは、かさなり型とねじれ型の2つのコンホメーションを代表的にとります。それぞれ、Newman投影で2つの炭素についている水素が、かさなって見えないのがかさなり型、互い違いに「いれこ」になっているのがねじれ型コンホメーションです。これらの安定度(エネルギー)は水素間の距離によって決まり、かさなり型は近いので、その分エネルギーが高くなります。かさなり型とねじれ型のエネルギー差は12kJ/molであり、カロリーに直すと約3kcal/molになります。
このねじれひずみ(torsional strain)は、論説する炭素の2つのC-Hσ結合の電子の反発(repulsion)に起因すると考えられています(教科書75ページFigure 4.5のa図)。それに加えて、antiコンホメーションでのC-Hσ結合と隣接する炭素のC-Hσ*結合の超共役(hyperconjugation)による重なり(overlapping)による安定化(教科書75ページのFigure 4.5のb図)もあります。効果としては前者の方が強いですが、これら2つの効果によって、eclipsedコンホメーションはstaggeredコンホメーションよりもねじれひずみを生じて高いエネルギーとなります。
ブタンのC2-C3炭素の間で同じような観察をすると、かさなり型とねじれ型でそれぞれ2種類のコンホメーションができることがわかります。ねじれ型では、C1とC4のメチル基が、ねじれ角180°のもの(反対側に位置しているもの)をアンチ型(anti)、ねじれ角が60°のものをゴーシュ型(gauche)と呼びます。アンチとゴーシュではアンチの方が安定ですが、そのエネルギー差は2.8kJ/mol、カロリーに直すと0.8Kcal/molになります。小さい差に見えますが、エネルギー図を見たらわかるように、これらは「谷」と「谷」の差なので、「平衡」によって規定されることになります。後に熱力学で出てくるのですが、室温でアンチ型とゴーシュ型の存在比を計算すると、3:1程度(温度が300K=27℃で)になります。すなわち75%がアンチ型で、25%がゴーシュ型になることになり、小さな値ではあるものの、比較的大きな効果をもたらすエネルギー差になります。
このコンホメーションの考え方は、有機化学以外にも多くの化学の分野で登場します。例えば高分子化学でもポリエチレンやポリプロピレンの構造は、やはり今日勉強したantiコンホメーションが有利に存在し、その結果、高分子の炭素鎖は「ジグザグ(zigzag)」構造をとることになります。ポリプロピレンではイソタクチック構造とシンジオタクチック構造がありますが、これはジグザグの片側にポリプロピレンのメチルがよっているか、あるいは交互に左右並んでいるか、の違いになり、それによる結晶化のしやすさから、高分子の特性を決めている要因だったりするのです。
これらのことは分子模型を創って観察すれば誰にでも理解できます。分子模型の使い方は授業で説明したとおりです。結合の長さは正しいボンドを使うと比較的正確に出ますので、C-Hはピンクのボンドを、C-Cは白のボンドを使ってみてください。物差しの単位はピコメーター(pm)です。オングストロームに変換するためには100で割ってください(1オングストローム=100 pm)。エタンやブタンの分子模型を作って、原子間の距離をいろいろ測ってみましょう。
Tuesday, 6 November 2018