Nucleophilic addition to the carbonyl group in aldehydes and ketones 1

 

 カルボニル基への反応は有機化学の中心をなす反応です。それを最初に取り上げるのがこの教科書のユニークなところです。カルボニル基はC=O二重結合を持ちますが、共鳴構造によって炭素上は+になります。したがって、求核剤(ローンペアを」持つもの)が、カルボニルの空軌道(電子の入っていない軌道・LUMO・あるいは炭素のpz軌道)に「配位結合」して新しい結合ができ、反応します。今日取り上げた求核剤(ローンペアを持ち炭素と配位結合するこの)はCN-、H2Oを勉強しました。CNが反応するとシアノヒドリンが得られます。これは平衡反応なので、その平衡位置はカルボニル化合物の種類に依存します。一般にアルデヒド(カルボニルの片側もしくは両方が水素)の場合は反応しやすく、平衡はシアノヒドリンに傾きますが、ケトン(カルボニルの両方の置換基が水素でなくてアルキル基やアリール基)の場合は、平衡は原系(すなわちケトン側)に傾きます。 カルボニル基への水の付加はgem-ジオールを作りますが、これは一般には不利な生成物であり、ホルムアルデヒドなどの例外を除いてはカルボニル化合物のほうが主として存在することになります。

 付加の平衡を決める要因は2つあります。一つは立体的な要素です。カルボニル基の炭素はsp2混成軌道なので、カルボニル基についたケトンの2つのアルキル基は120度の角度で離れていられますが、シアノヒドリンやgem-ジオールになってしまうと、カルボニル炭素はsp3混成軌道となるために角度が109度に狭められます。そのためケトンについていた2つの置換基の距離が狭まり(120度で離れるより109度で離れる方が近くなる)、その結果としてこれらが混み合うことになります。そのためこの状態をきらい、結果として平衡はケトンの状態すなわち原料の状態に傾きます。

 もう一つは電子的な効果です。シアノヒドリン化や水の付加はカルボニル基の活性化(たとえば隣接位に電子求引性基をつける)などすることで反応は速くなります。たとえばアセトアルデヒドよりもクロロアセトアルデヒドの方が、カルボニル基の分極(カルボニル炭素の+性)が大きくなるので、求核攻撃(ローンペアは電子なので−性をもつ)を受けやすくなり、シアノヒドリン化や水の付加が起こりやすくなります。

 反応を起こすには、どちらかの反応剤を活性化すればいいことになります。例えば求核剤を活性化すれば、求核剤からの電子の押し出し(教科書ではpushという言葉を使っています)によって付加反応が進行しますし、カルボニル基をプロトン化してより電子不足の状態にして活性化することでも(この場合は電子を引っ張っているので教科書ではpullという言葉を使っています)付加反応が進行する。有機反応の場合は一般に塩基触媒(アルカリ条件)で反応が早くなる場合は、逆の酸性条件でも反応が加速される場合が多くあります。これは求核付加を例にとれば、電子のドナー(求核剤・ローンペア)の反応性を塩基性条件で高くしてやっても、電子のアクセプター(求電子剤・カルボニル炭素)の反応性を酸性条件で高くしても反応は速くなることを意味します。したがって、有機反応をうまくコントロールするには2つの反応基質のどちらを活性化するか、そこにかかっているのです。この考え方は今後もよく出てきますので頭に入れいておきましょう。

Tuesday, 10 April 2018

 
 
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