化学Ⅱ
化学Ⅱ
2018
この時間では最初に巻き矢印の使い方のおさらいをしました。これをマスターすれば有機化学はとても簡単!になるはずなのですが、正しく矢印を書けるようになるまでが「大変」なのかもしれません。まずは、なれること。そのためにはせっせと時間を惜しまず「演習」に励んでください。
さて、矢印には「意味」があります。言うまでもなく「電子がある場所から次の場所に動く」のを示すことです。ですから、
矢印の基点は「電子があるところ」になりますし
矢印の終点は「電子が最終的に落ち着く先」
になります。これを忘れると、電子の「ない」ところから、「ある」ところへ、逆に矢印を引くこともしてしまうので、訳がわからないことになります。従って、
「電子がある」ところから「ない」ところへ
の原則は忘れないようにしましょう。
そうなると矢印に基点は
結合(σ結合およびπ結合)そのもの あるいは
ローンペア
のいずれかになります。結合から引くときには、その結合が何らかの変化をする場合になります。ローンペアから引くときには配位結合する場合になります
矢印の終点は電子の行き着く先ですが、それは
新しい結合(σ結合でもπ結合でも)
ローンペア
のいずれかです。新しい結合なら、それが反応後の分子でできた結合になりますし、ローンペアなら、脱離基として作用した場合(ハロゲンアニオンなどのように)になります。
矢印を引くときの難しさは、いくつかありますが、その一つとして
オクテット則を外れる多数の電子対を抱え込む分子を書いてしまう
ことが上げられるでしょう。これを防ぐには、電子が移っていくことになる原子が、いまいくつの最外殻電子を持っているか、をルイスの構造式(最外殻電子を・で表す構造式)で確認しながらするのが最も安全です。一見+の電荷を持っていて、電子を受け入れそうな感じでも、アンモニウム塩の窒素原子のように最外殻電子がすでに8個の電子を持っているために、これ以上の電子の受け入れができない原子もあります。そういった原子に「矢印の終点」となるような反応はあり得ません。
しかし、単一の矢印だけではオクテット則が破れるものの、引き続く電子の流れの矢印がそれを解消してくれて、結果としてオクテット則を破らないですむような電子の流れもたくさんあります。授業で勉強したE2脱離の電子の流れはまさにそうで、3つの矢印のうち、第3の矢印(C-ハロゲン結合が切れて、ハロゲンアニオンのローンペアとなる矢印)を書き忘れると、第二の矢印で、π結合ができた炭素原子の最外殻電子は10個となってしまい、正しい電子の流れを示すことができません。この反応では3つの矢印をすべて書くことで初めて電子の流れすべてを表した反応メカニズムが表されるのです。このように連続した電子のフローを示す場合には矢印を過不足なく(そして正確に)記載して、トータルの電子の流れを示さなくてはいけ得ません。
その他、半矢印は一電子の流れ(すなわちラジカル反応・教科書では第20章でのみ出てきます))、通常矢印は二電子の流れを表します。教科書にある例題や練習問題を数多くこなして、矢印の表記になれるようにしましょう。
エネルギーと速度および平衡に関しては
速度と平衡は無関係(今日の一番おおきなポイント)
平衡は谷と谷のエネルギー差、速度は谷と山とのエネルギー差を見る
ΔGが正なら吸熱反応で平衡は原料系に傾き(K<1)、負なら発熱反応で平衡は生成系に傾く(K>1)
遷移状態は山(正確には峠)の上であり、これは観測不可能。一方中間体は山間の谷であり、これは観測可能(なことがある)
でした。
速度と平衡を見積もるための式はとてもよく似ていますが、速度は「経路」に依存しますし、平衡は「化合物」に依存します。従って、化合物が決まれば、平衡が決まりますし、速度は反応の経路(メカニズム)が変わればどんどん変わります。高校で勉強したように、触媒は反応の経路を変えるので、速度を変えますが、原料と生成物が同じなら、平衡の位置は変わりません(可逆反応の場合)。もう一度高校の教科書をよく見て思い出しましょう。
来週は期末試験です。中間試験と同じ要領でおこないます。部屋は共通教育の掲示を見て確認してください。受けない場合は自動的に不可になります。簡単な問題を出します。よく復習してがんばってください。
Organic Reactions and the concept of mechanism 2
23/01/2018