有機化学反応(2)

Tuesday, 3 December 2013

 

さて、本講義の一つのクライマックスである「矢印を使った電子の移動の表現」を勉強しました。これをマスターすれば有機化学はとても簡単!になるはずなのですが、正しく矢印を書けるようになるまでが「大変」なのかもしれません。まずは、なれること。そのためにはせっせと時間を惜しまず「演習」に励んでください。

さて、矢印には「意味」があります。言うまでもなく「電子がある場所から次の場所に動く」のを示すことです。ですから、


矢印の基点は「電子があるところ」になりますし

矢印の終点は「電子がないところ」もしくは「収容されるところ」


になります。これを忘れると、電子の「ない」ところから、「ある」ところへ、逆に矢印を引くこともしてしまうので、訳がわからないことになります。従って、

「電子がある」ところから「ない」ところへ

の原則は忘れないようにしましょう。

そうなると矢印に基点は


結合そのもの あるいは

ローンペア


のいずれかになります。結合から引くときには、その結合が何らかの変化をする場合になります。ローンペアから引くときには配位結合する場合になります

矢印の終点は電子の行き着く先ですが、それは


新しい結合(σ結合でもπ結合でも)

ローンペア


のいずれかです。新しい結合なら、それが反応後の分子でできた結合になりますし、ローンペアなら、脱離基として作用した場合(ハロゲンアニオンなどのように)になります。

矢印を引くときの難しさは、いくつかありますが、その一つとして

オクテット則を外れる多数の電子対を抱え込む分子を書いてしまう

ことが上げられるでしょう。これを防ぐには、電子が移っていくことになる原子が、いまいくつの最外殻電子を持っているか、をルイスの構造式(最外殻電子を・で表す構造式)で確認しながらするのが最も安全です。一見+の電荷を持っていて、電子を受け入れそうな感じでも、アンモニウム塩の窒素原子のように最外殻電子がすでに8個の電子を持っているために、これ以上の電子の受け入れができない原子もあります。そういった原子に「矢印の終点」となるような反応はあり得ません。

しかし、単一の矢印だけではオクテット則が破れるものの、引き続く電子の流れの矢印がそれを解消してくれて、結果としてオクテット則を破らないですむような電子の流れもたくさんあります。授業で勉強したE2脱離の電子の流れはまさにそうで、3つの矢印のうち、第3の矢印(C-ハロゲン結合が切れて、ハロゲンアニオンのローンペアとなる矢印)を書き忘れると、第二の矢印で、π結合ができた炭素原子の最外殻電子は10個となってしまい、正しい電子の流れを示すことができません。この反応では3つの矢印をすべて書くことで初めて電子の流れすべてを表した反応メカニズムが表されるのです。このように連続した電子のフローを示す場合には矢印を過不足なく(そして正確に)記載して、トータルの電子の流れを示さなくてはいけ得ません。

その他、半矢印は一電子の流れ(すなわちラジカル反応)、通常矢印は二電子の流れを表します。教科書にある例題や練習問題を数多くこなして、矢印の表記になれるようにしましょう。


中間テストをします。12月17日火曜日に、実施します。持ち込みは一切不可。定期試験と同じスタイルで行います。学生証は出席に使いますから忘れないこと。出題範囲は、最初からその前の回の授業までの項目すべてです。しっかり復習してのぞんでください。演習問題を、手を使って書いてたくさんこなすことが大事です。「念写一眼」とばかり、目で教科書を追うだけでは、きっと好結果をもたらすことはないでしょう。

 
 

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