共役と電子の非局在化(1)

Tuesday, 24 December 2013

 

今日のトピックの基本はπ結合の拡張です。

共役は、π結合(例えばエチレン)の成り立ちを、単に拡張しただけのことです。エチレンのπ結合は、エチレンの2つのsp2炭素のpz軌道がかさなることで形成されます。このときに「結合性軌道(=いわゆる普通のπ軌道)」と「反結合性軌道(=一般にπ*軌道と呼ばれます。エネルギーは元のpzレベルより高くなります)」の2つの軌道ができます。ここで「sp2炭素がずっとつながっていった場合、π結合はどうなるのだろうか」という疑問がわきますが、答えは、「π結合がつながった(拡張したπ結合)ができる」となります。分子模型をつかって説明したように、sp2炭素が続くところでは、pz軌道が隣り合って存在できるので、「全部のpz軌道がかさなる」ことができて、新たな「長い」π軌道ができます。すなわちπ結合は別にsp2炭素が2つからできるだけでなくてもいい。sp2炭素が3つ、4つ、5つとつながっていけば、それだけ長い「π結合」ができるのです。これを「共役系」と言います。共役することで、エチレン型のπ結合(炭素2つ出てきたもの)を独立して存在させるよりも、ほんの少し安定化ができます。従って共役系を作ることで分子もより安定になれるメリットがあるのです。

π結合系の拡張は、何も偶数校の炭素とは限りません。奇数個でも拡張が可能です。代表がアリルカチオンです。アリルカチオン(CH2=CHCH+)は、左から炭素1,2,3と番号をつけたときに、炭素1と2にはπ結合が(すなわち電子がある)ある状態ですが、炭素3は電子が足りない状態になっています。しかし、共役のところでも勉強したように、炭素1-3のpz軌道は「分かれてなく」て、むしろ「つながった状態」にあるわけです。したがって、炭素3だけが電子がない「極端な状態」は不自然です。また、この絵は電子をそれぞれ移動した場合に「+CHCH=CH2」ともかけます。こうなると先とは逆に炭素1が電子がない、炭素2と3の間にπ結合がある状態にかけます。分子模型をくむと、π結合が3つの炭素につながって拡張されていることが明確に表すことができます。しかし、これを古典的な化学式表記で書くのはなかなか大変です。そのため、「共鳴」という考え方を導入する必要があります。

共鳴とは、アリルカチオンの状態を、π結合を動かして2つの状態(CH2=CHCH+と+CHCH=CH2)を書くことができるようにするわけですが(詳細は教科書も見てください)、この2つの状態の違いは、電子の配置だけで、原子の位置や結合は一切動いていません。こういう2つの状態はいずれも「極端」な状態で、現実にはその中間状態(すなわち炭素1〜3のすべてに適当に電子がばらまかれている状態)であるのが、分子模型から想定される「真の姿」として素直に考えられます。いいかえれば「真の姿」は、上の式でも下の式でもない、その中間なのだ」と言えそうです。そしてCH2=CHCH+も+CHCH=CH2も、「極端なかたち」として考えられる式と言えそうです。ただ、化学式の制約から、このような式は素直にかけますが、その中間状態をうまく書き表す方法がありません。そこで、この2つの式を「両矢印」で結んで、真の姿は「この2つの極限構造式(極端な式、であることを表している名前ですね)の共鳴した状態なのだ」として表すことにしました。これを共鳴と言います。結局は、電子状態をどこかの炭素に集めるのではなく、分散して「ストレスのかからない状態」になろうとする、そうすることで分子の安定化(=エネルギーを下げる)を働かせる効果だと言うことができます。分子模型をつくって、状態をよく観察して、この概念を理解するようにしてください。


Have a nice holiday! Merry Christmas and Happy New Year!

 
 

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