カルボニル基への求核付加反応

Tuesday, 10 December 2013

 

いよいよ反応が出てきました。有機化学の勉強では反応が出てくると格段に難しくなると言います。しかし化学Ⅱの範囲では今日の分だけなので(簡単な酸塩基反応を除きます)、安心して反応の基礎的な事項を理解するようにしましょう。

カルボニル基への反応は有機化学の中心をなす反応です。それを最初に取り上げるのがこの教科書のユニークなところです。カルボニル基はC=O二重結合を持ちますが、共鳴構造によって炭素上は+になります。したがって、求核剤(ローンペアを」持つもの)が、カルボニルの空軌道(電子の入っていない軌道・LUMO・あるいは炭素のpz軌道)に「配位結合」して新しい結合ができ、反応します。今日取り上げた求核剤(ローンペアを持ち炭素と配位結合するこの)はCN-、H2O

などを勉強しました。CNが反応するとシアノヒドリンが得られます。これは平衡反応なので、その平衡位置はカルボニル化合物の種類に依存します。一般にアルデヒド(カルボニルの片側もしくは両方が水素)の場合は反応しやすく、平衡はシアノヒドリンに傾きますが、ケトン(カルボニルの両方の置換基が水素でなくてアルキル基やアリール基)の場合は、平衡は原系(すなわちケトン側)に傾きます。これは立体的な要素が効いており、カルボニルの状態ならsp2混成軌道なので2つのアルキル基は120度の角度で離れていられますが、シアノヒドリンになってしまうと、sp3混成軌道となるために角度が109度に狭められます。そのためより混み合うので、この状態をきらい、結果として平衡は原系に傾きます。

またシアノヒドリン化や水の付加はカルボニル基の活性化(たとえば隣接位に電子求引性基をつける)などすることで反応は速くなります。たとえばアセトアルデヒドよりもクロロアセトアルデヒドの方が、カルボニル基の分極(カルボニル炭素の+性)が大きくなるので、求核攻撃(ローンペアは電子なので−性をもつ)を受けやすくなり、シアノヒドリン化や水の付加が起こりやすくなります。

有機反応の場合は一般に塩基触媒(アルカリ条件)で反応が早くなる場合は、逆の酸性条件でも反応が加速される場合が多くあります。これは求核付加を例にとれば、電子のドナー(求核剤・ローンペア)の反応性を塩基性条件で高くしてやっても、電子のアクセプター(求電子剤・カルボニル炭素)の反応性を酸性条件で高くしても反応は速くなることを意味します。したがって、有機反応をうまくコントロールするには2つの反応基質のどちらを活性化するか、そこにかかっているのです。この考え方は今後もよく出てきますので頭に入れいておきましょう。


来週12月17日は中間試験を行います。これまで勉強したところの基礎的な問題を出すことにしていますから、しっかり勉強してください。教科書を読むだけではダメですから、必ず紙と鉛筆を多用して「自分で書いて」あるいは問題を「自分で答案を作って」勉強するようにしてください。模型をくむのも有効です。しっかりがんばってください。

 
 

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