立体配座と分子のひずみ(1)
立体配座と分子のひずみ(1)
Tuesday, 12 November 2013
今日の講義は分子模型を作ったらすぐにわかる単純な話です。でも、分子模型をくまないで横着をすると確実にわからなくなりますよ。復習では分子模型をくんで、それを眺めながらしっかり理解するようにしてください。
今日のキーワードは立体配座およびねじれ型コンホメーション、かさなり型コンホメーションです。また、その表記法のNewman投影にもなれましょう。
エタンは、かさなり型とねじれ型の2つのコンホメーションを代表的にとります。それぞれ、Newman投影で2つの炭素についている水素が、かさなって見えないのがかさなり型、互い違いに「いれこ」になっているのがねじれ型コンホメーションです。これらの安定度(エネルギー)は水素間の距離によって決まり、かさなり型は近いので、その分エネルギーが高くなります。かさなり型とねじれ型のエネルギー差は12kJ/molであり、カロリーに直すと約2.8kcal/molになります。
ブタンのC2-C3炭素の間で同じような観察をすると、かさなり型とねじれ型でそれぞれ2種類のコンホメーションができることがわかります。ねじれ型では、C1とC4のメチル基が、ねじれ角180°のもの(反対側に位置しているもの)をアンチ型、ねじれ角が60°のものをゴーシュ型と呼びます。アンチとゴーシュではアンチの方が安定ですが、そのエネルギー差は2.8kJ/mol、カロリーに直すと0.7Kcal/molになります。小さい差に見えますが、エネルギー図を見たらわかるように、これらは「谷」と「谷」の差なので、「平衡」によって規定されることになります。室温でアンチ型とゴーシュ型の存在比を計算すると、3:1程度(300Kで)になります。すなわち75%がアンチ型で、25%がゴーシュ型になることになり、小さな値ではあるものの、比較的大きな効果をもたらすエネルギー差になります。
分子模型の使い方は授業で説明したとおりですが、炭素には2種類の玉(黒のsp3とsp2)があることに注意しましょう。普通の化合物を作るときは(今日のものもそうですが)sp3の玉を使ってください。結合の長さは正しいボンドを使うと比較的正確に出ますので、C-Hはピンクのボンドを、C-Cは城のボンドを使ってみてください。物差しの単位はオングストロームですから、分子模型をくんで、原子間の距離をいろいろ測ってみましょう。