分子の形と混成軌道

Tuesday, 22 October 2013

 

有機反応を理解するためには、分子軌道を理解しなければなりません。軌道のお話は、非常に地味で基礎的な部分でありながら、今後の応用に絶対になくてはならない基礎理論です。ここの理解をおろそかにすると、今後の分子化学現象の殆どを理解しにくくなる恐れがあります。従って、授業の復習や練習問題を通して、授業内容の補強をしっかりと行ってください。


今回の講義では、メタンなどの簡単な分子を中心に分子がどのような軌道から構成されているのか、そして、分子の形、結合距離、結合角が何によって決まるのかを紹介しました。


分子の形は、一般的には“物理的な性質”と、“有機化合物の反応パターン”を考える上で重要な要素です。その形は原子の結合角と結合距離によって決まり、炭素原子の結合が4つなら正四面体、3つなら平面、そして2つなら直線構造になります。また、分子の形を考える上で重要なのがVSEPRモデルです。これは孤立電子対や結合電子対の電子は、お互いに反発し合い、できるだけ遠ざかった位置を取ろうとするという概念を取り入れたモデルです。これによって分子の形を予測したりもします。


共有結合は2原子によって共有されている電子対のことです。原子はお互いのs軌道やpx, pz, py軌道中の電子を出し合って分子軌道を形成し、原子間に結合が形成されます。形成された分子軌道はエネルギーの異なる結合性軌道と半結合性軌道に分かれます。


混成軌道は、原子間で形成された結合を説明するために必要な概念です。各原子がs軌道やp軌道中の電子を使う際に、それぞれの軌道が縮退し(同じエネルギーレベル)新たな軌道(sp, sp2, sp3)を形成します。sp軌道はs軌道1つとp軌道1つが縮退して形成される2つの軌道であり、アセチレン炭素が該当します。アセチレンには3重結合がありますが、これはsp軌道を利用する1つのσ結合とp軌道を利用する2つπ結合から成り立っています。同様に、sp2軌道はs軌道1つとp軌道2つが縮退して形成される3つの軌道ありエチレン炭素が該当します、エチレンの2重結合は、sp2軌道を利用する1つのσ結合とp軌道を利用する1つπ結合から成り立っています。sp3軌道はs軌道1つとp軌道3つが縮退して形成される4つの軌道でありメタン炭素が該当します。メタンのC-H結合は、全てsp3軌道を利用して形成されたσ結合です。


分子の表し方として、HとCの原子記号を割り当てない線形表記があります。これをもちいることにより、より複雑な分子を迅速に描くことが可能です。テキストの例を参考にしながら是非ともマスターしてください。


 
 
 

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