化学結合と分子の成り立ち(2)
化学結合と分子の成り立ち(2)
Tuesday, 15 October 2013
今回のポイントはLewisの構造式が書けるところにあります。いわゆる「電子を・(ドット)で表す」式です。自分で書くことができるように演習問題をしっかりやってください。ここは基礎ではありますが、将来有機化学だけでなく無機化学にも出てくるところですし、専門にあがっても、大学院生になっても、研究者として独立してからも、いつでも使います。
詳しくは教科書を熟読し、演習を繰り返してもらうことで学習してもらうしかないのですが、いくつか注意すべきポイントをメモしておきましょう。
1.この式では「価電子(最外殻電子)」だけを表します。閉殻になった電子は考えなくてよろしい。
2.第1周期原子(水素)の価電子の数は2以下、第2周期原子(炭素・窒素・酸素・ホウ素・フッ素)の価電子数は8以下です。これ以上の電子数になることは絶対にあり得ません。かりにLewis構造式を書いていて、炭素の価電子数が9とか10蜷鱈、それは間違いです。
3.第3周期原子(ケイ素・硫黄・リンなど)では、価電子の数は8が最も安定になりますが、時によっては10や12などの8を超えた数になることがあります。これは第3周期元素には3d軌道があるからですが、硫酸やリン酸でこれは見られます。
4.第2周期元素の場合は、価電子数は「8」が最も安定な構造を与えますが、「6」になることもあります。ホウ素では普通に3つの結合を持てば6にしかならないのですが、これはこれでホウ素の場合の特異的なケースとして理解しておいてください。炭素でも「6」になる場合はあります。これは今後勉強します。
5.書き方は、まずその元素の「族」に対応した「価電子」を書きます。その後共有結合を作りながら、価電子数を8になるようにしていきましょう。すべての原子(水素をのぞく)が価電子が8になるような構造が一番安定(=一番普通にある)な構造になります。
6.共有結合を一つ作るたびに、「価電子」数は1つ増えます。二重結合では2つ、3つの結合では3つ増えることになります。炭素では、炭素そのものの価電子が4なので、オクテット則を満たすべく価電子数を8にするためには、4つの共有結合を持つことになります。これが炭素が「4本の結合(手)を持つ」大きな理由です。
7.形式電荷はわかりにくいかもしれませんが、教科書の式に従って計算すると、出せます。全体で+か−になっているイオンの場合は、どこかに電荷が載ることになるので理解しやすいかもしれませんが、中性分子、例えばニトロメタンの場合では、窒素上に+、酸素の一つに−の形式電荷がのります。
8.化合物によっては複数のLewis構造式が書けます。もしそれらが正しく上記の条件を満たしているのであれば、その構造式は「あり得る」構造式です。複数ある場合は、実際の分子は「複数ある構造式の中間の構造をとっている」と考えられます。すなわち、書かれたLewis構造式は、「極限構造式」として存在し、実際の分子のかたちは複数の「極限構造式」の「折衷された」構造になります。これを「共鳴」といいます。共鳴構造を持つ化合物はそれだけで何らかの安定化を受けます。従って共鳴構造式を多数持つ分子は、それだけでできやすく、存在しやすいわけです。もちろんいろんなタイプの共鳴の極限構造式は書けます。中には「オクテット則」を満たさないものも書けるかもしれません。そういった極限構造式は、「存在する」ものの、「多数存在するわけでない」言い換えれば「重要な寄与をしている式ではない」こともあるわけです。共鳴の場合、その構造が「あり得る」のと「どのくらいの寄与があるか」は別問題なのです。言い換えれば「可能性」が「ある/ない」の問題と、「どのくらいの寄与があるか(どのくらい重要か)」は別の問題になります。今日勉強した、酢酸アニオンやニトロメタンの共鳴構造式は、いずれも同じだけの寄与があり、重要な構造です。
付記:メチルアニオンのLewis構造式のスライドで、炭素の価電子を5と書きましたが、正しくは教科書にあるように「4」です。修正しておいてください。