カルボニル基への水の付加はgem-ジオールを作りますが、これは一般には不利な生成物であり、ホルムアルデヒドなどの例外を除いてはカルボニル化合物のほうが主として存在することになります。一方がアルコキシドであるヘミアセタールは、分子内で生成する場合を除いては安定ではありません。しかし、分子内ヘミアセタールで代表的な化合物がグルコースなどの糖のピラノース構造ですから、重要な化合物であるのにはかわりありません。

アルデヒドをアルコール中酸触媒と作用させると、アセタールができます。これは、途中まではヘミアセタールができる反応と同じですが、その後脱水(プロトンがシフトしていることに注意してください)して、活性化されたカルボニル中間体になります。この中間体は、カルボニル酸素にプロトンが配位結合しているのではなく、炭素−酸素結合がくっついているので、切れません.アルコール中での反応ですから、大過剰の存在しているアルコールが求核付加して、アルコール由来のプロトンが抜けてアセタールができます。このように、アルコールの付加では脱水を伴いつつ2分子のアルコールが付加していく反応が起こります。求核付加は同じですが、脱水プロセスが新しい反応として出てきました。これもしっかり把握しておきましょう。授業中に指摘したように、教科書の178ページのScheme 8.8と179ページのExample 8.5の式はそれぞれ逆反応を書いていますから、巻き矢印の流れ方を比べながらどのように矢印を書くのか勉強するのにとても参考になります。

アミンとの反応は第一級アミンと第二級アミンで最終生成物が異なります。しかし、途中のイミニウム中間体の生成までは全く共通ですから、あまり悩まなくていいかもしれません。アミンは求核性が高いのでそのままでもカルボニル基に求核付加し、生じたアルコキシドアニオンとアンモニウムカチオンをプロトンがシフトすることで、中和します。次いで反応系が弱酸性(pH=4程度が最適)なので、ヘミアミナールの水酸基にプロトン化が起こり、水が抜けてイミニウム中間体が生じます。第一級アミンの場合はイミン窒素上に残ったプロトンが外れることでイミンになりますし、第二級アミンの場合はカルボニルの隣接炭素上の水素がプロトンとして外れることでエナミンとなります。アセタールとイミンの反応の違いは教科書のScheme 8.8と181ページのScheme 8.9を比べるとよくわかります。酸素が窒素に変わっただけで、同じような反応、異なるところを見比べて、整理して理解できるようにしておきましょう。

Wittig反応はカルボニル基を一段階でメチレン基に変換する反応です。反応はイリドと呼ばれる活性種がカルボニル炭素を攻撃して進みます。イリドRCH=PPh3は対応するホスホニウム塩と塩基から発生します。カルボニル酸素がとれて見かけ上脱水が進行するのはリンと酸素の親和性のためと考えられています。

このように、求核付加もいくつかのパターンに分けられることがわかりました。付加するだけ、付加脱離、付加して脱水、いずれも最初のステップは同じで、後に同置換基が寄与するか(抜けるか、プロトンがシフトするかなど)で決まります。よく整理して理解するようにしましょう。


2月2日火曜日はいよいよ最終試験を行います。これまで勉強したところの基礎的な問題を出すことにしていますから、しっかり勉強してください。教科書を読むだけではダメですから、必ず紙と鉛筆を多用して「自分で書いて」あるいは問題を「自分で答案を作って」勉強するようにしてください。模型をくむのも有効です。授業のビデオも全部(最終回はまもなく)あげてありますから、わかりにくかったところを聞き直なおしして勉強しましょう。しっかりがんばってください。

Nucleophilic addition to the carbonyl group in aldehydes and ketones 2

26 January 2016

 
 
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