化学Ⅱ(2014-2015)
化学Ⅱ(2014-2015)
今日の話しは、最後はベンゼンの話でした。高校で勉強したときに、何となく適当に「芳香族の共鳴安定化」という言葉は聞いてきたと思います。ベンゼンの二重結合が、「ぐるぐる回って・・・」なんて話もきいたことがあろうかと思います。でもここまで「共役」と「共鳴」をしっかりマスターしたあなたは、ベンゼン環にはもはや「π結合が3つ」なんて考えはなくなっているでしょう。模型をくめば一目瞭然。「共役」で環上に広がった6つのpz軌道からできた拡張された「π結合」に「6つの電子がばらまかれて(共鳴して)いる」だけなのですから。実は環上の「拡張π軌道」でπ電子数が4n+2になると大きな安定化が起こります。詳しくは説明しませんが(分子軌道の概念が必要なので)、環になることでこういうことが起こるのです。水素化熱の測定による実験からも求まっているとおり、150kJ/molの大きな安定化は、芳香族化合物の正確を決めてしまう大きな要素です。π電子数が4n+2のとき安定化することを芳香族性といい、4n+2であることをヒュッケル則といいます。芳香族性はπ電子数が4n+2の時ならば起こりますので、授業の最後で説明した、トロポン(シクロヘキサトリエノン)や質問のあったピロールやチオフェン(窒素や硫黄の入った5員環)も芳香族化合物になります。
光反応の基礎も勉強しました。紫外光や可視光はエネルギーが大きいので、ちょうど分子軌道のギャップの大きさと同じくらいのエネルギーになります。分子は紫外線を吸収して(=エネルギーを得て)電子を一つ高い軌道に「遷移」させます。この状態を「励起状態」といいます。励起された状態から分子は3つの運命が待っています。1つは励起された電子がもとの軌道に戻り、そのときにエネルギーを光りもしくは熱として放出する過程、2つめは三重項状態に遷移して、そこからもとの軌道に戻る場合、3つめは励起した状態の電子がよその分子に移動して化学反応する場合、です。1つめの発光を「蛍光」といいます。もちろん熱としてエネルギーを失えば光は出ませんから「無輻射遷移」という過程もあります。蛍光は分子が光るので、材料などとしてたくさんの用途が期待できる化学プロセスです。2つめの三重項を経由した過程では、光の寿命が少し長い「リン光」がでます。蛍光とリン光は少し性質が違うのですが、これは調べてみてもらうとして、ここでは詳しくは説明しません。3つめの化学反応は、光を当てるときのとても大事な過程で、これによって光合成や、視覚が機能するようになるとされています。π結合をたくさん持つ共役系の化合物は、このように光と関わる分子を作るためには大事なユニットなのです。
ベンゼンと芳香族性について勉強しました。π電子数が問題になりますが、ローンペアをカウントする場合、しない場合をよく区別できるようにしておきましょう
Tuesday, 25 November 2014....
Conjugation, pi-electron delocalization, and aromaticity 2